「就農活動」の入り口にたってみた~Part4~

2021年6月に新・農業人フェア「農業EXPO」に行ってきました。そこで窓口相談して教えてもらったことを軸に、私なりの「就農」についての考えがどうかわったかを整理して数回にわたって書き留めている話のPart4です。

今回は、次々に出てきた課題をうけて、その後に整理・再構築した自分の考えがどう変わったかを書いていきます。

前回のお話はこちら

相談ででてきた課題からの考察

今回の就農相談で出てきた課題について前回の記事でつらつらと書きましたが、ざっくりとまとめると次のようになります。

  • 現業の仕事を続けることと、農地確保を一括で解決しようとしていることに就農窓口への相談では無理があった
  • 移住先選択と就農プロセスを一括で考えようとしていたため、決心するためのハードルが高くなっていて、現実的な妥協点がみえない
  • 多くを移住後の資金繰り中心に考えているため、何がしたいかがボヤけてしまいがち
  • 「資金繰り」「農地確保」「移住先検討」「生計を立てる手段の獲得」の4つの事柄に強いこだわりを持っていて、それらについては受け入れ側から提示された内容ですんなりと妥協できない

これらのことから、どうやら、自分のいまの状態では「就農」という方法では、ここまでの活動の中での強いこだわりである「資金繰り」「農地確保」「移住先検討」「生計を立てる手段の獲得」の4つのことがらを同時に一発解決するのは、難しそうな状態であるということがわかりました。

そしてなによりも、それらの自分のこだわりの源流にある心から湧き出てくる「自分のためにしたいこと」の部分を自覚して他の人に伝える言語化していくことが今後の活動の優先事項であることに気づきました。その「自分のためにしたいこと」を元にした相談内容を、「自分のためにしたいこと」を元にした課題整理をしながら適切な方々に相談していくことこそが、物事がいい方向に向かう道筋なのではないかと気づきました。

就農相談から得られた収穫

次に、「自分のためにしたいこと」がまだモヤモヤした状態の中で、「就農が自分のためにしたいことなのか?」ということを自分に問いかけ整理していきました。そうすると、就農相談からも何かを得ているという事実を自覚するようになりました。

就農相談を通して得られた収穫をまとめると次のようになります。

  • 自分のためにしたいこととして「農家になりたい!!」との気持ちは無いことが明確になった
  • すべてのやりたいことの中から、どれが自分のためにしたいことなのかを明確に自覚しておらず、心の整理が必要な状態であることに気づいた
  • 自分のためにしたいことを達成するための生計を立てる手段としての「就農」にはとてもワクワクしていることに気づいた

その次からのアクションとして、「自分のためにしたいこと」を整理することをやっていくことにしました。

「自分のためにしたいこと」の意味

今回使っている「自分のためにしたいこと」という言葉は、それを表現するための適切な単語がわからないので、「自分のためにしたいこと」と表現していますが、文字から読み取れる意味だけでなく、次にような意味で使っています。

  • 「自分のためにしたいこと」とは、なんかしらの理由づけや他人からの要望とは直接的に無関係であり、自分の心から湧き出てくる「やりたいこと」
  • 「自分のためにしたいこと」とは、それを考えたり実行したりするとワクワクして楽しいこと
  • 「自分のためにしたいこと」とは、プロセスや途中の失敗を楽しめること
  • 「自分のためにしたいこと」とは、その時までの経験に関連して発生しているもの
  • 「自分のためにしたいこと」とは、経験がかわると内容も変わっていくもの
  • 「自分のためにしたいこと」とは、シンプルに言語化できるもの
  • 「自分のためにしたいこと」とは、他の人に伝えるもの

心理学・宗教学方面に詳しい人ならもっと適切な単語を知っているかもしれません。

「自分のためにしたいこと」の整理

自分の場合は、「自分のためにしたいこと」の整理にとてつもない時間が必要となり本当に苦労しました。長年、自分の気持ち押し殺して他人と関わる習慣が染み付いていてたためか、自分の気持ちの中にある欲望を拾い上げることさえ難しい作業だったのです。

この「自分のためにしたいこと」の整理の詳細は、育ってきた経験や環境によりまったく違うと思いますので、私の経緯は割愛します。もし、体系立てて多くの人がうまく導き出すノウハウがあるとすれば、カウンセリングや心理療法の領域かもしれません。私は、とにかく色んな人と話をして、のたうちまわるように、なんとか整理してました。

さて、時間と苦労を経て、最初にでてきた「自分のためにしたいこと」は、このようになりました。

  • 巨大なエディブルガーデンを作りたい(正)
  • 経済的な不安に柔軟に対応できるようになりたい(副)

もっと別の表現あるだろう?と自問自答の日々ではあるのですが、いまの時点ではこれが限界です。別の言い方した時点でワクワクしなかったり腹におちなくてモヤモヤしちゃいます。なんでだろ?

ちなみに「エディブルガーデン」というのは、ガーデニングの世界の用語で「食べれる庭」という意味です。食べれるものを育てるのですが、趣味の世界の話です。エディブルガーデンの中で何をどのように育てようにも、収益性があろうとなかろうと、見栄えがどうあろうとも、作るひとのポリシーがどうあろうとも、そんな、「こうあるべき」な定義はありません。作っている人のセンスで生物多様性環境が保たれ、そこに訪れた人が五感でそれを感じる、実にアーティスティックな世界です。

そして、いまの住んでいる東京都の都市部では、イメージする巨大なエディブルガーデンを作るのは、環境面と自分の経済状況において現実的に不可能なことから、移住が必要となっています。

考え方の変化について

最後に、この整理した「自分のためにしたいこと」を起点に、いままで強いこだわりを持っていたポイントを再度見直してみました。相談する前と比べるとすごい整理されて、今後の指針も明確になっています。

こだわり1:農地確保について

「農地取得」にこだわっていたのは、巨大なエディブルガーデンの土地が(おそらく)農地になると想定してたからだと思います。しかし、よく考えてみると、それが農地である必要性はまったくありませんでした。今後は農地法対策や農地取得資格などを検討する前に、巨大なエディブルガーデンに向けた土地を探そうと考えています。

こだわり2:移住地探しについて

移住場所のイメージはなんとなくあったのですが、移住地を決めていなかったのは、直感的な部分で諸々の選択肢を狭めたくなかったからだと思います。しかし、それが就農条件や農地取得条件などに当てはめて決めていくというのは大きな間違いでした。まずは玄関先にあることやそこに居ることを楽しむことができるといったエディブルガーデンのイメージにあった環境条件の物件探しをすることが先決でそれの結果によって決めればよいと思いました。

こだわり3:資金繰りについて

資金繰りについては、移住や加齢で収入源の確保条件が変化していくことが明白な中、経済的な不安からくるものが大きかったと思います。この経済的な不安があると、楽しめるものも楽しめなくなるので、いまもこだわりはあります。しかしながら、資金繰りを気にするあまり、本筋のエディブルガーデンの中身を無視して条件を決めてしまうと、エディブルガーデン自体が楽しめなくなってしまって、本末転倒になることは明白なので、資金繰りを話の中心におかないよう気をつけようと思います。

不安の解消のために必要な活動である収入源の確保や出費の改善など、経済的な外部環境への適応作業は、昔から結構好きでワクワクしながら楽しくやってきたので、今後もそれをやっていければよいと考えます。

こだわり4:生計を立てる手段の獲得について

エディブルガーデンを趣味の世界と割り切った場合に、生計を立てる手段(収入源)は別に必要ですが、現時点でそこには大きなこだわりはないことがわかりました。実際に、それが農業であるかもしれませんし、続けられるなら現業を続けるのでもいいですし、別の何かであるかもしれません。その時の経済状況/健康状態/使える時間などを考慮して一番いいものを選べばいいのだと思います。例え農業であっても、研修農家さんでの修行をせずに農業法人への就職や地元の農家さんのお手伝いでも構わない。

なので、今回のように、いきなり「兼業農家」とか、「2年間修行せずに、農地取得」など、いきりたって探し回わったり、決心を迫られる(ような気になる)ことは、自分の焦りからくる自らの首をしめるような行為だったと思います。Take it easyの精神でちょっと肩の力をぬくのも必要です。

おわりに

Part4まで続いた『「就農活動」の入り口に立ってみた』は、これでおわりです。

ここに書いたように、「下手にできあがっていた」状態の自分が就農窓口に相談することがきっかけで、考えが整理でき、その後の移住活動が見えてきたという結果となりました。

実際に私のように都市部で生まれ育った人間が漠然と「田舎で農業をやる」みたいな話は最近よく耳にするようになりましたが、それと同時に、「条件面で踏ん切りがつかない」とか「行動にでたものの、思っていたイメージとのギャップが大きすぎて続かない」みたいな声もよく聞くようになりました。

なので、 農業をやりたい人と農業をやってほしい人のマッチングが少しでもスムーズに進んでいけばよいなとの思いで、ちょっと変わってるかもしれない私の経験談を書いてみました。

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