「就農活動」の入り口にたってみた~Part3~


2021年6月に新・農業人フェア「農業EXPO」に行ってきました。そこで窓口相談して教えてもらったことを軸に、私なりの「就農」についての考えがどうかわったかを整理して数回にわたって書き留めている話のPart3です。

今回は、就農相談を通じて見えてきた、就農イメージの課題を具体的に書いていきます。

前回のお話はこちら

相談前の就農イメージ

まずは、相談前に自分の持っていた就農イメージのおさらいです。

  • 初期投資が少ない/借金をしない→路地栽培
  • 農薬・肥料・農業資材等の変動費を抑える→自然栽培
  • 作物は取得した土地の気候にあう収益性の高い作物を選ぶ→作物未定(果樹/野菜)
  • 個客への販売は中間流通コストをできるだけ抑えて売上単価を上げる→ネット直販、東京の知り合いのレストランなど
  • 初期の運転資金を抑えるために現業と並行する→兼業農家、半農半X

これらは資金繰りが気になっているからこうなったんですが、見事に資金繰りの課題から逆算しているものばかりです。

栽培技術選択について:

就農イメージに栽培技術に関することは2点。「路地栽培」と「自然栽培」。それらは、農家さんがやる分にはまったく問題ないものですが、就農前の時点で決めつけやこだわりが強すぎると、視野が狭くなったり、就農準備や事業が軌道にのるまでのプロセスが限定されたりするものでした。

路地栽培という決めつけ:

まず、「路地栽培」。あまりにも初期投資の金額だけに囚われすぎて安易に選択し、それ以外、施設栽培やハウス栽培と呼ばれる栽培方法の特性をよくよく検討せすに決めていました。

施設栽培やハウス栽培の利点は、主に販売単価Upや安定供給に役立つので、投資金額を上回る収入を得れる可能性があります。

  • 収穫時期をずらして路地栽培では取れない時期に作物を収穫して販売単価をあげることができる。路地栽培での収穫時期では同じ種類のものが大量に出回るために、販売単価をあげる条件は厳しくなる。
  • その地域の路地栽培では栽培できない作物を生産することにより、商品の独自性を出しやすくなる。
  • 気温や降水量の急激な自然環境変化に対してつよく、特にレストランなどの一定のニーズに対して安定供給がしやすい
  • トマトに代表されるように水分コントロールが栽培に有効な作物の場合、それをコントロールすることができる。

複数品目の栽培などの場合で、投資金額を抑える形で一部をハウス栽培とし路地栽培の併用など、柔軟な選択ができる話であるにもかかわらず、こういう利点をまったく検討していなかったのは反省点です。また、これらの利点を知らずに決めた地域の気候によっては路地栽培で作れる作物が制限されたりするので、最初から路地栽培のみって決めつけるのは本当にもったいないです。

開業前の自然栽培へのこだわり:

これは、私が選んでいた自然栽培だけでなく、他の栽培技術でも同じことが言えるのですが、農地の確保ができていない新規就農希望者が栽培方法や作物に強いこだわりをもって行政窓口に相談した場合、地域の受け入れ体制が整っていない場合があります。

通常は、栽培方法や作物に対してのこだわりがあると、選択肢が絞られその後の動きが明確になるので、とてもいいことだと思います。

相談当時の私は、ただでさえ選択幅が狭そうな自分の条件にあう就農方法(兼業農家になるまでの道のり)の選択幅をそれ以上狭くしたくなかったのです。

ある窓口の方から「自分でやりたいことがあって就農するなら、とにかく開業のためにと割り切って準備や修行して、自分で開業したら好きな技術で好きな作物を作るってやり方もあるよ。それもひとつ。」と、アドバイスいただきました。



兼業農家・半農半Xについて

就農相談窓口に最も期待していたものは、いまの仕事を続けながら兼業農家として就農するにはどうしたらいいか?の情報でした。

結論から先に書くと、こちらの事情と就農窓口から提示していただいたプロセスの間に埋められない溝がありました。農地を持っていない非農家がいきなり兼業農家になる方法というのは、ほとんどの自治体では受け入れ体制は無いようでした。

こちらの事情を中心とした就農プロセス

  1. いまの仕事を続ける
  2. 地域を決めて移住する
  3. 仕事しながら開業準備をする(研修含む)
  4. 農地を確保
  5. 兼業農家として開業

仕事をやめないことが条件となってました。

就農窓口で提示していただいた就農プロセス(開業型)

  1. 地域を決めて移住する
  2. 仕事をやめる
  3. 2年間フルタイムで研修を受ける
  4. 農地を紹介してもらう
  5. 専業農家として開業

就農窓口で提示していただいた就農プロセス(就職型)

  1. 社員募集している農業法人を探して応募する
  2. 採用決まったら移住する
  3. 今の仕事を辞める
  4. 農業法人に就職する
  5. 農業法人で数年働く
  6. 独立して専業農家として開業

どちらも、まずは移住して今の仕事をやめるという、仮に決心するのにも、開業準備期間の資金繰りとしては非常にハードルの高いものです。このハードルは、今の住んでいる場所の近くに農業法人や研修先があるのなら、もっと低く感じたことでしょう。

ここで、一つ見えてきたのは、今住んでいるところが東京の都市部で、周りに農業大学校も農家もまったくないような場所であることから、どちらを選んだとしても移住と仕事を辞めるという2点を同時に実行する必要性が決心のハードルを上げているということです。

まだ、就農を選択肢の一つくらいにしか考えていない自分には即時に受け入れることはできなかったです。



農地取得方法について

「農業大学校や農家での研修を2年やって師匠が認めた場合には師匠が農地を探して紹介してもらえることがある」というのが、農地にあてがない新規就農者が農地取得するまでの王道プロセスです。

私の場合、いまの仕事をやめないという条件だったので、この王道プロセス以外の方法を探す必要がありました。なので、就農相談窓口でそれについても聞いて回りました。

そこで、わかったこと。それは、王道プロセスの農地取得以外の方法は、就農窓口の方への相談内容としては適していないということです。

相談当時はまだうまく整理できてなかったのですが、「就農」と「農地取得」の関係は深いですが、まったくの別物であります。なので、就農窓口の方々としては、「就農」の王道プロセスを順序よく踏んでいくと「農地取得」はできるので、「農地取得方法」はそれほど重要視して案内していく内容ではありませんし、現実としてほぼ管轄外です。

まだ就農活動の入口にたっているだけの状態にもかかわらず、頭の中で「兼業農家を目指す自分には農地取得が最重要課題の一つだ、なんとか解決しなけければ」と、「下手に出来上がってる状態」の私は、無邪気に就農窓口の方に農地取得方法について相談してたのです。

就農窓口の方々からすると、「農地法なら農業委員会の管轄だし、土地を貸すか貸さないかはそれぞれの地主さんの事情なので窓口が案内できるもんでもない。だから、農地取得方法を私たちに聞かれても困ります」っていうのが本当のところだと思います。それを親身になって聞いていただき、あれこれヒントをいただくことがでました。おかげで、その後は心が折れずに活動を続けてこれました。感謝してます。

結果として、それまでやってきた【移住後の生業として「就農」を検討するための活動】のほかに、もう一つ新たに【農地取得をするための活動】が生まれることになりました。

その後、農地取得については、後日の活動の中で「ま、なんとかなるかー」と思えるようになったんですが、それの経緯や理由については長くなるので、また別に整理して書き出してみようと思います。



次回は、就農イメージが、これらのような課題だらけであったという実態を受けて、その後に「やりたいこと」や「就農」ついて自分がどのように整理して考えるようになったかを書いてみようと思います。

コメント

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