「就農活動」の入り口にたってみた~Part2~

2021年6月に新・農業人フェア「農業EXPO」に行ってきました。そこで窓口相談して教えてもらったことを軸に、私なりの「就農」についての考えがどうかわったかを整理して数回にわたって書き留めている話のPart2です。

今回は、就農相談の聞いてくれる自治体窓口の方々の特徴と話をスムーズに進めるためのポイントをその実体験を交えて書いていきます。

前回のお話はこちら

就農相談の現場とは?:

就農相談とは、自分で、就農イメージを固め、自治体の窓口の方々に相談すること。

実際には、お互いの希望条件に相手がどのようにあうか?のマッチングの場といえると思います。お互いの条件が合わなければ、妥協できるポイントを探るか、他の相手を探すか、大きな2択となります。とはいえ、その場で、決断をする必要はなく、後日にとりわけ期限もなく次のステップに行くためのなんらかの申し込みをするかしないかだけで終わりますので、それほどピリピリと条件を交渉するほどの空気感ではないですし、相談者はお話聞かせもらうくらいの軽い気持ちで大丈夫です。

ただ、ここで大事なことは、お相手にもその立場からくる条件や要望があるということです。だから、こちらの要望を伝えて受け入れられなかったからといって、がっかりすることはないですし、相手や制度に文句つけても意味はないということです。

自治体の窓口の方々の立場:

担当地域の行政の窓口であるので、当然、地域の農業の特色をよくご存知である。地域の特色というのは、地域全体の生産量/作物ブランド/流通先/栽培技術などのメジャーな話からマイナーな話まで把握されており、それに基づいてお話を聞かせてくれます。

彼らの次のようなミッションを持って窓口業務をやられております。

  • 高齢化が進んでいる「農業」という地域産業の担い手不足の解消
  • 地域で整えた新規就農者向けの受け入れ体制への誘致

ここまでは事前にわかっていましたが、一歩踏み込んでみると、自治体窓口の方々が次ようなことを前提に相談にのっていることが見えてきました。

  • 各自治体ごとに、地域産業の担い手不足問題のポイントが違う
  • 地域で受け入れ体制が整っていないものは案内できないことがある
  • 個別の農家さんと調整する内容は案内できない
  • 現実問題として新規就農者が2~3年で離農してしまうケースが多くあり、それに対する問題意識は高かめで、とりわけ軌道にのるまでの資金繰りについて大きな問題と認識している

彼らはそういう背景に基づいて対応してくれていることがわかります。

例えば、相談者が「その地域で栽培実績のない作物を周囲とは違う新しい農法で挑戦したい!」という情熱を持って窓口の人と伝えても、窓口の方は「まずは学校に行って勉強するか受け入れ農家で修行するかしてみてください。」と、一見、かみあっているのかいないのかよくわからない回答がくることになります。

相談者側は、「栽培実績のない作物を自分が独学で勉強してきた新しい農法で挑戦したいんだけれども、できますか?」 と意味で聞いているのに対して、窓口側は「受け入れ体制が整っているものではないので窓口役としてサポートすることが難しいけれども、どうしてもやりたいなら、農業大学校や既存農家さんの元で修行することで農業委員会に農家として認められる状態になって晴れて農地を確保して、やってみたらよいと思うよ。ただ、チャレンジも加味すると、軌道にのるまでの資金とか心配だよね、大丈夫?でもまぁ、大丈夫かどうかは農業大学校や修行期間に技術を覚えながら考えられるから成功率も上がるし、そうすれば各種助成金などの受給資格もクリアするし、まずはそこからやってみませんか?」って意味のことを言っているだけなのです。

ここで、相談者側が回答だけを聞いて、「農業の担い手不足問題とかいってる割には、いままでのやり方でしか就農をみとめないのか?」とか思うのは大きな勘違いなので、そういう風にとらないようにしましょう。確かに少し言葉足らずなところがありますが、窓口のほとんどの方は誠意を持って対応してくれています。

ちなみにその地域で受け入れ体制が整っていない作物・農法・就農プランなどにこだわりを持って強く希望して相談した場合、ほとんどの回答は、「まずは学校に行って勉強するか受け入れ農家で修行するかしてみてはどうでしょう?」になると思います。

相談してみた窓口所感:

そういった各自治体の就農窓口の方々に、自分の就農イメージをもとに、同じような質問をもとに相談すると、本当にそれぞれの自治体でコンディションがこんなに違うんだなと印象を受けました。以下は、農業EXPOにおいて自分が相談したときのそれぞれの窓口の所感です。

A県X市:産業としての農業だけでなく地域全体の高齢化/過疎化が問題となっている県。そのため、県をあげての移住支援制度が充実しており、その枠組みの中で独自の就農支援制度で他県なら制度にハマりにくいロングテールな就農希望者も拾い上げる戦略をとっています。具体的には、国の助成金とは別に地域独自の新規就農者への助成金があり、その年齢上限が59歳だったり、半農半Xの新規就農にも助成金がでるとのことでした。かなり条件が揃っていたので、後日連絡をとり、コロナが収束したら訪問する話を具体的に進めてみました。

B県XX地区:新規就農者の資金繰りをさらにサポートするため、当初の2年間、地域おこし協力隊として農業関連の仕事をしてもらうことで給与を出す制度を導入。その2年間、新規就農者が流通/販売量の多い地元の特産品の仕事をすることで、基本的な栽培/販売技術を覚え、事業開始初期の売上高の確保をその作物しながら、そのあとに自分の好きな農業やればいいって考え方。助成金だけでなく就農プランもパッケージングされている、素敵です。

C県:温暖かつ台風被害が少ない地域にあり農業が比較的安定しているためか、高齢化問題はあるものの、保守的な制度設計となっている県。「友人・知人を通して農地のコネやあてができるなら、なんとかなるかもよ?」って教えてくれました。ちなみに助成金は国レベルのものだけでしたが、移住と就農窓口をワンストップで行うなど、就農希望者に対しての利便をはかるべく、独自に創意工夫をされています。

D県:東京隣接で消費の地の利を生かした野菜栽培が盛んな県。県内の都市部が大きなこともあり、農業に対する知識や覚悟が少なめの相談者が訪れるケースが多いためか、相談窓口でふるいにかけてる印象でした。こちらの状況を伝えると直ちに「で、いくら資金もってるんですか?」と聞かれたときにはびっくりしました。そんな懐具合、初対面の人にはっきり言えないです。その後「まずは希望地域を絞ってからきてください」って言われて、相談を続ける心が折れました。

E県:産業としての農業だけでなく地域全体の高齢化/過疎化が問題となっている山間部の県。行政として農業と山間部への移住誘致をパッケージングして考慮されているからか、相談内容を聞いて「就農窓口」の枠組みを超えて移住窓口を紹介してくれるなど、その臨機応変さが素敵でした。

F県:大都市を抱える県であり、新規就農の制度も比較的保守的な県。条件の合わない私の話にも親身になって聞いてくれ、適応しそうな他県の窓口を紹介してくれる男前。ありがとうございます。

以上、本当に地域によって色々です。就農相談をすることで未経験者の自分の立ち位置からの目線だけではまったく見えないこともかなり感じることができました。これらのことをきっかけに、その後の自分のやりたいことや条件の優先順位などの整理が進む大ことになったので、本当に相談してよかったなと思います。

また、これ以外に様々な自治体のオンライン相談会にもいくつか参加してますが、その所感は省くとして、それぞれの自治体の背景からくる支援制度の違いや新規就農の受け入れ体制の違いは実際に相談しないと見えてこないものだと思います。ちょっとでも就農に興味のある方は、是非、就農窓口に相談をしてみてはどうでしょうか?希望としている地域が決まっていても、1箇所だけでなくて、複数の自治体に相談することは見聞を広げる意味でもオススメです。

次回は、いろんな相談を通じて、事前に固めていた自分の就農イメージのどこにどんな課題を見つけたのか?を書いてみようと思います。

コメント

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