「特定のエリアを決めずに、物件コンディション重視で I ターン向けの物件探しをしている都市生活者」が移住物件を探すための情報源の考察をまとめた第3回の最終回です。
今回は、田舎暮らしをするときの物件探しの中心となる情報源の市区町村の空き家バンクの特徴や利用方法を掘り下げてみたいと思います。
市区町村の空き家バンクのWebサイト
各市区町村で運営している空き家バンクのWebサイト。地域の空き家バンク物件を掲載していて、一番鮮度が高い情報がここに集まっています。いわば、空き家バンクの情報源の本丸です。
全国の市区町村レベルの自治体のほとんどが運営していますので、Google検索にて、「市区町村名 空き家バンク」と検索すると何かしらの情報が閲覧できます。
実際に閲覧してみると、市区町村レベルまで細かい単位になると、そのときに空いている物件情報の数は、それほど多くありません。多いところで30件程度、少ないところでは1〜2件という掲載数でした。
あと、なぜだかわかりませんが、多くの空き家バンクのWebサイトに関しては検索性が乏しく、例えば土地の面接や農地付きなどのこだわり条件などで検索することはできません。それゆえに、自分の物件の条件がある程度ある場合は、空いている物件の物件情報を一つずつ閲覧して条件を確認することになります。
これは検索しなくても、一覧表示を眺めるだけで十分なほど、登録されている空き家の数が少ないために重要視していないのかも知れませんし、別の理由があるのかも知れません。が、とにかく、都市生活者が民間の情報サイトの検索でイメージするような詳細なこだわり条件で検索できないことがほとんどです。
また、尾道市のように、インターネットにて物件情報を公開せずに、利用申し込み後に現地訪問の上で閲覧できるという自治体も存在しています。
また、空き家バンクの運営方法は、市区町村の役所による運営、委託NPOによる運営、委託業者による運営と、さまざまな運営方法があるので、運営方法も掲載内容も一様性はないです。
特に、物件の内見については、さまざまは運営方法があり、空き家バンクの担当者の方が物件の内見下見まで付き添ってくれるケース、物件の持ち主に連絡してくれて内見や交渉は家主さんと直接行うケース、物件を担当している地域の不動産業者にお任せするケースなどがあります。
物件内見までの空き家バンクのおすすめ利用方法
各市区町村で微妙に内容が変わりますが、物件の内見までの空き家バンクのおすすめの利用方法というのは、下記のような流れとなります。
1
利用登録申込書提出
各市区町村の空き家バンクに利用登録申込書を提出する
2
空き家情報閲覧
空き家情報をWebサイト等で閲覧して気にいる物件を探す
3
内見の申込
空き家バンクの担当者に気に入った物件の内見申し込みをする
4
内見
自治体のルールに基づいて、内見を実施する
大概の空き家情報の閲覧はWebで閲覧できるので、別に利用登録申込書を出すまでもない。と、私も最初は思っておりました。気に入った空き家情報を見つけてから申し込むこと、すなわち「インターネットで商取引のスタンダードな形」で情報を探すことに何の疑問もなく無意識にやっていました。
でも、実際に利用してみて、気に入ったエリアがある場合は早めに空き家バンク利用登録申込書を提出しておくのが重要であることがわかってきました。その理由いくつかあります。
理由その1:空き家バンクの担当者の方が親身になって動いてくれる
空き家バンク利用登録申込書を提出すると、空き家バンクの担当者さんが、利用登録申込書に書いた希望条件にあった物件を探してくれたり、新しい登録物件がでた時に教えてくれることがあります。利用申込書を提出する前に、一度、相談申しみをして相談しておくと、担当者の方もより親身になってくれて条件にあった物件を探してくれます。
例えば、Webサイトには「農地付き」と書いてあっても、それが建屋と隣接しているのか?どのくらいの広さなのか?はわからないことが多いので、空き家バンクの担当の方に問い合わせすることになります。
理由その2:物件内見の申込順、契約の交渉権の優先順位
内見//交渉の順番は、利用申込書を既に提出している人の中での申し込み順となっているケースがあります。例えば、希少な条件の物件が新規登録されたのを見つけた場合、その場で急いで利用申込書を提出してからの内見の申し込みとなります。これと同時に既に利用登録をしている他の方が内見申込をされていると、ワンクッション手間が多い分そちらが優先されてしまいます。
私のケースだと、ある物件の内見を申し込んだ時に7番目と言われた言われたこともあります。ほぼ絶望的な順番でした。その後に空き家バンクの人に相談しているときに聞くとその物件の最初の内見していた方が購入することなったと聞いていたのでその物件のことはスッキリわすれることにしました。でも、その2ヶ月後に空き家バンクの方から連絡があり、「(その物件は)先頭の方との交渉中に話がまとまらず、キャンセルになったので見てみますか?」と提案していただきました。「私の前に5人も並んでいるのに何故私に?」と理由を聞くと、前の5人はその後の空き家バンク利用登録をしていなくて、唯一、利用登録をしていた私にその物件の交渉権がまわってきたのです。そういうこともありますので、空き家バンク利用登録をやっておいて損はありません。
理由その3:利用登録していない人の問い合わせに対応できないことがある
市区町村によっては、利用登録がされていない人からの物件情報の問い合わせを断るケースもあります。自治体の窓口の担当の人は、営利目的の民間の不動産業者の担当の方ではなく、地域に移住する人を増やすために働いているのですが、多くの場合は人手不足の中、お忙しくされてます。なので、市区町村によっては、「利用登録をしている人=移住を希望している人」と基準をおいて対応せざるをえなくて、利用登録もしていない通りすがりの人の気軽な物件内容に関する問い合わせに対応するだけの手間がかけられない実情があるようです。
これらの理由から、特定の市区町村で、いい物件に出会いたければ、空き家バンク利用登録申込は必須になってきます。また、空き家バンク担当の方と何度もやりとりが続いていくにつれ、その地域の情報なども詳しく教えていただけます。
実際に複数の市区町村の方に相談して空き家バンク利用者登録をしてみたのですが、みなさん本当に物件探しに心よく協力していただけました。ただし、都市部での転居の際の物件探しのような「市場原理で価格や条件が決まり、いち早く物件を探し出せるように充実させた検索機能をもつ集約された情報源を用意され、それをインターネットで探して申し込む世界の常識」は、I ターン移住物件探しには通じないです。やっぱり、そこで出会う人との縁をどれだけ大事にするか?という部分は忘れてはならないと思います。空き家バンク利用登録申込というのは、空き家バンクの担当の方と直接のご縁を持つキッカケとなりますので、是非とも登録するのがおすすめです。
特定の市区町村を事前にPickupして新規登録物件をチェックする
特定の市区町村を絞り込めている人は問題ないのですが、市区町村までを絞り込めていない場合は、複数の市区町村の空き家バンクを閲覧していくことになります。タイミングよりそれらを閲覧して、登録済み物件の中から希望物件が見つかればそれに越したことはないのですが、希望条件が明確になればなるほど、その後いつか登録される新規登録物件をチェックして内見申込をすることになると思います。
私の場合は、海がある場所を広い範囲で探していましたので、海側に位置する市区町村をPickupして最大では20を超えましたので、新規登録物件をチェックするのに一工夫必要となりました。
Page Monitor (Google Chrome 拡張機能)
マニュアル作業で毎日チェックするわけにはいかないので、Webサイトのページ更新をチェックしてブラウザに通知してくれるツールを利用して最新情報をチェックしてました。
その他のツールやチェック方法については、よくわかりませんが、詳しい人に聞くと色々あると思いますので、調べてください。
その他
その他の情報源として、市区町村レベルの不動産業者のWebサイトもあります。が、そのエリアの不動産業者の方がWebサイトを持っていないことが多いことや、そこに掲載されているのはその不動産業者の方が担当している物件だったりするため、物件探しをするための情報源としては、あまり使うことは少なかったです。どちらかというと、空き家バンクの情報を補完する形でその物件を担当する不動産業者のWebページを見ることが多かったです。
ただし、実際にいくつか見て、空き家バンク以外のその地域の不動産物件の情報に出会うこともありましたので、そこで探してみるのもいいことだと感じました。
さいごに
実際にここで紹介した情報源を一通り見てみると、「やっぱり、思ったより物件情報が数少ないかも?全国的に空き家が問題になってると報道されるほどではないのでは?」と感じてしまいます。実際に人が利用していない空き家はもっとあります。私が見聞きした範囲の話でも、ここに書いた情報源のシステムや物件情報の流通経路の問題ではなくて、そもそも家主さんが空き家バンクへの登録や不動産業者を通して販売/賃貸することに二の足を踏んでいるさまざまな事情があるようです。そこら辺の話は、まとまってきて、気が向いたら、書いてみるかもしれません。
以上で、「都市生活者向けIターン移住物件の情報源」のまとめシリーズは終わります。
おまけ:国土交通省の空き家バンク情報
空き家バンク制度について、詳しく知りたい方はこちら。→国土交通省 空き家・空き地バンク総合ページ。
また、全国版に掲載されていたりいなかったり、都道府県版があったりなかったりする背景については、「全国版空き家・空き地バンクの取組について(国土交通省)」という資料のP.11からはじまるQ&Aの回答を読むとある程度把握できます。
全国の空き家バンクのリンク集→全国地方公共団体空き家・空き地情報サイトリンク集(国土交通省)
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